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2011年12月6日火曜日

「翻訳夜話」(村上春樹・柴田元幸)を読みました

作家・翻訳家の村上春樹氏、そしてポール・オースターなど現代アメリカ文学の翻訳で知られる翻訳家・柴田元幸氏の共著「翻訳夜話」を読みました。

翻訳夜話 (文春新書)翻訳夜話 (文春新書)
村上 春樹 柴田 元幸

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東京大学教養学部、翻訳学校、6人の若手翻訳者たちと一緒に開催された、3回の翻訳フォーラムの内容を記録した本です。
翻訳家がどんなことを考え、どんなことに悩んで翻訳をしているのか、英語という日本語とは全く違う言語を翻訳するということの難しさと面白さが伝わってきます。
英語と日本語のセンテンスの区切り方の違い、日本語の小説にはないような表現(セリフのあとに "~~" he said. ってしょっちゅう入ることとか)をどう訳すか。一人称(I)を「私」「俺」「僕」のどれにするかをどうやって決めるか。英語独特のクリシェ(決まり文句)は意訳するべきか直訳するべきか。翻訳をする上で作家や作品の時代背景などをどれだけ考慮するか。フォーラムの参加者たちからの質問に答える形で、このような翻訳の現場での難問を、お二人がどのように解決して、どんなポリシーをもって翻訳しているかが語られていきます。

また「海彦山彦」という章では、レイモンド・カーヴァーの「Collectors」、ポール・オースターの「Auggie Wren's Christmas Story」を、柴田氏・村上氏が競訳したものが掲載されています。(巻末には2作品の原文も掲載されています。)
同じ英文を、柴田訳・村上訳の2パターンを読み比べてみると、翻訳フォーラムの中で語られた二人の翻訳家としての考え方の違い(そして共通点も)が、どのように実際の訳文に反映されているかが見えてきて非常に面白いです。

私は普段英語を聞く・読む・書く・話す、を中心に英語学習をしているので、「翻訳」についてはあまり熱心に考えたことがなかったのですが、翻訳という作業を通じて一つの作品にコミットしていく翻訳家という仕事の奥深さを垣間見れた気がします。

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